「あけて~ あけて~」稲川淳二はマジびびる

youtubeで怪談を流しながら寝る習性があるのだが、昨日はマジびびった。

 

稲川淳二の怪談である。

 

話の筋は単純極まる。

 

少女が家で寝ていると真夜中にふっと目が覚める。家族は寝静まり、風の音がやけに響いて聞こえる。風の音に乗って微かに「たすけて~ たすけて~」という声が聞こえてくる。気になった少女は寝ぼけ眼で玄関に行くと、ガラス戸の向こうに何かの影が。

 

「あけて~あけて~」影は繰り返す。寝ぼけている少女はその声に誘われて戸を開けようとする。すると

 

「あけちゃいけない!」と、また別の声が響く。はっとした少女は戸から離れる。するとまた

 

「あけて~あけて~」少女は抗し難い何かを感じてまた戸に手を伸ばしてしまう。

するとまた

「あけちゃいけない」

 

の繰り返しである。

まったくもって怖い筋ではないのだが、これを稲川淳二にやられると恐ろしいと言ったらないのである。

 

単に稲川淳二が「あけて~あけて~」「あけちゃいけない」を繰り返し言っているだけといえばだけなのだが、たまらなく恐ろしい。

 

あれはなんなのかね。他の話し手がまったく同じ話をしても全然こわくないだろうし、もちろん文字にしても全然こわくない。映像化して大げさに演出してもさしたる怖さはないであろう。

 

とにかく稲川淳二の声の調子で「あけて~あけて~」「あけちゃいけない」でなくてはならないのである。

 

最近の怪談師はディティールにこだわるが、この話はディティールもクソもない。

ただただ淳二の「あけて~」の繰り返しが耐え難いほど恐ろしい。怪談の語りの恐ろしさの本質は話の筋ではなく、淳二であることがわからされてしまう。

 

もしも稲川淳二が急に家に来て「あけて~」と繰り返されたら俺は開けてしまうかもしれない。